介護業界の懸念と展望。
皆様、ご無沙汰しております。清時です。
最近は、ニュースでも介護のイメージダウンにつながるような暗いニュースばかりで少し嫌気がさしていますが、介護事業者としてこれから迎えるであろう問題点や今後の展望などを少し書かせて頂きます。
2000年4月に施行された介護保険制度は、高齢化社会における介護のニーズに対応するために重要な役割を果たしていますが、24年が経過した今、介護業界は経営におけるさまざまな課題に取り組む必要があります。介護報酬の改定率は24年で平均0.12%とわずかながら上昇している一方で、同期間に消費者物価指数は約8.4%も上昇し、物価高騰が業界全体に大きな影響を与えていますが、当社は堅実に経営を続けてこれています。
厚生労働省の発表によると、2024年6月に廃止された訪問介護事業所は前年同月比で11.8%増加し、133件に達しました。この増加は、介護業界全体の経営環境が厳しくなっていることを示しており、事業者にとっては難しい局面が続いています。
介護報酬がほとんど変わらない中で、事業者がスタッフの賃金アップを実現するためには、企業の独自の努力が不可欠です。現在の報酬制度では、訪問件数が直接売り上げに結びつくため、訪問回数を増やすことが最も現実的な方法です。これは収益拡大と賃金引き上げにつながりますが、一方で訪問件数の増加に伴い、スタッフの業務負担が増し、過労やサービスの質低下を招くリスクも存在します。
そのため、当社ではスタッフの健康と質の高いサービスを最優先に考え、1日の訪問件数を制限しています。これにより、スタッフが十分な余裕を持ち、利用者一人ひとりに対して質の高いケアを提供できる環境を整えています。この取り組みによって、スタッフが安心して働きながらも、利用者にきめ細やかなサービスを提供することが可能になっています。
また、訪問件数を増やすためには人員の増加が必要ですが、介護業界全体で慢性的な人手不足が課題となっており、簡単に解決できる問題ではありません。新たなスタッフの採用にはコストがかかり、それがさらに事業の経営を厳しくする要因にもなりかねません。
このような状況下では、事業者が収益を増やしながらスタッフの賃金を引き上げるための選択肢は限られていますが、質の向上と効率化を両立させる取り組みが求められています。効率的な業務運営やデジタル技術の活用、スタッフのスキルアップを通じて、持続可能な成長を目指していくことが重要です。
さらには、政府や関係機関による介護報酬の見直しや業界全体の支援体制の強化も不可欠です。物価が上昇し続ける現代において、適切な報酬の配分が行われなければ、現場で働く介護スタッフの待遇改善は難しく、業界全体の持続可能性が脅かされる可能性があります。
介護業界は、社会全体の高齢化が進む中で、ますます重要な役割を果たすことが期待されています。高齢者が安心して生活できる社会を支えるためには、現場で働くスタッフの労働環境や賃金の改善が不可欠です。そのためには、国や地方自治体、介護事業者が一体となり、労働環境を改善するための具体的な施策を講じる必要があります。
また、長期的に見ると現在の介護報酬が変わらないままでは、業界全体が破綻の危機に直面する可能性があります。一方で、介護事業者が増えすぎている現状もまた一つの課題です。事業者が多ければ多いほど、スタッフが分散し、人材確保が困難になる恐れがあります。すべての問題を一度に解決するのは容易ではありませんが、最も重要なのは、利用者が困らないようにすることであり、私たち事業者と政府が協力して対応していくべきだと感じています。
まとめると、介護保険制度の下で訪問件数を増やすことは一時的な収益改善策ですが、それだけでは持続可能な成長は難しいです。長期的な視点で、質と効率を両立させる努力が業界全体に求められています。当社も、独自の経営スタイルを取り入れて、訪問件数を制限しながら質を重視する取り組みを通じて、持続可能な介護サービスの提供に貢献していきます。